飲食店の内装費を抑えながら思いどおりの店をつくるなら、自分でできる作業と、資格が必要な専門工事を分けて進めるのが近道です。電気・給排水・ガス・消防設備の工事は法律で資格者や指定業者に限られているため、そこだけを職人に頼み、塗装や家具の組み立てなどは自分で行います。

すべてを自分で行うと、資格が必要な工事まで手を出してしまい、法令違反や事故につながるおそれがあります。反対に、すべてを一括で頼めば、そのぶん費用はかさみます。費用面の考え方は「どこまで自分でやる?ハイブリッドDIY」で解説しました。

本稿では、誰に・何を・どう頼むかに絞って、工事ごとの線引き、職人への頼み方、作業の順番、部分発注の注意点までを実務目線で解説します。

自分でできる作業と、資格が必要な工事の線引き

店舗内装のDIYとは、業者にすべてを任せず、オーナー自身が塗装や棚の組み立てなどの作業を行うことです。電気・給排水・ガス・消防設備の工事は原則として資格者や指定業者でなければ行えず、壁の塗装・壁紙貼り・家具の組み立てなどの仕上げ作業は資格がなくても行えます。

工事の種類作業の例行える人関係する法令自分で行えるか
電気工事コンセントの増設・移設、壁のスイッチの交換、照明の配線、分電盤の工事電気工事士(建物の受電のしかたによっては第一種電気工事士などが必要)電気工事士法不可(プラグの差し込みや、コードを差込み接続器・ソケットにつなぐなどの「軽微な工事」を除く)
給水工事給水管の新設・延長・移設、水栓の増設水道事業者(水道局など)が指定した「指定給水装置工事事業者」水道法、各水道事業者の条例・規程不可(単独水栓の取替えや、こま・パッキンの交換など、配管を伴わない「軽微な変更」を除く)
排水工事排水管の新設・延長・移設、排水設備の改造多くの自治体では、市区町村が指定した「排水設備指定工事店」下水道法、各自治体の下水道条例多くの自治体で不可(工事前に計画の確認申請が必要な場合もある)
ガス工事ガス管の延長、ガス栓の増設都市ガス:ガス会社またはその指定工事店/LPガス:液化石油ガス設備士ガス事業法、液化石油ガス法不可
消防設備自動火災報知設備・スプリンクラー設備などの工事甲種消防設備士(工事前に消防署への着工届が必要)消防法不可
木工事・造作棚の取り付け、テーブル・イスの組み立て、簡単な間仕切り資格は不要建築基準法、消防法(※1)可能(間仕切りは事前確認を推奨)
内装仕上げ壁紙(クロス)貼り、壁・天井の塗装、タイル張り資格は不要建築基準法(※2)可能(使える材料に制限がある場合あり)

※1 間仕切りで部屋の区切りが変わると、避難経路や、火災報知器・スプリンクラーの設置範囲に影響する場合があります。天井まで届く壁をつくる前に、所轄の消防署と建物の管理者に確認してください。
※2 火を使う厨房がある店や一定規模以上の店では、壁や天井に燃えにくい材料を使うよう定められている場合があります(内装制限)。使える材料は建物の構造・規模や部屋の用途で変わるため、施工前に確認してください。
※ 誘導灯は、消防設備士でなければ行えない工事からは除外されていますが、配線を伴うため電気工事士の資格が必要です。設置の要否や届出は所轄の消防署に確認してください(出典:名古屋市消防局「工事整備対象設備等の着工届出」・2026年10月9日確認)。
※ 飲食店で使うカーテンやじゅうたんなどは、消防法により防炎性能のある「防炎物品」を使う必要があります(出典:東京消防庁「防炎規制の対象となる防火対象物等」・2026年10月9日確認)。
※ 給水の「軽微な変更」の範囲は水道法施行規則第13条によります(出典:国土交通省「指定給水装置工事事業者制度」・2026年10月9日確認)。排水設備の指定工事店制度の例:横浜市「排水設備の計画確認」(2026年10月9日確認)。
※ テナントビルでは、資格の有無にかかわらず、ビル側が指定した業者でないと工事できない箇所があります。工事の前に管理会社へ確認してください。

専門工事だけを職人に頼むときの手順

部分発注とは、工務店などに一括で任せず、大工・電気工事士・設備業者などに工程ごとに直接依頼することです。頼む範囲をはっきり決め、現場の情報を正確に伝えることが、トラブルを防ぐいちばんのポイントです。

  1. 頼む範囲を決める:「配線とコンセントの設置までは電気工事士に頼み、照明器具を置く・掛けるのは自分で行う」のように、職人の作業がどこで終わるかを決める。照明器具の取り付けでも、配線をつなぐ作業は電気工事士の仕事です。
  2. 伝える情報をそろえる:現場の寸法(間口・奥行き・天井高)、設置したい機器や照明の型番・仕様書(電圧・消費電力、給排水口の位置など)を用意する。
  3. 写真と採寸を記録する:工事する場所の全体写真、配線や配管が見えている部分の寄りの写真、メジャーを当てた写真を撮り、見積もりのときに渡す。
  4. 作業日と順番をすり合わせる:自分の作業と職人の作業が同じ日にぶつからないよう、工程表をつくって事前に共有する。

DIYと職人の作業の順番(例)

配線・配管などの設備工事を先に、仕上げと組み立てを後に行うのが基本です。順番を間違えると、仕上げた壁や床を配線のために壊すことになり、余計な費用と時間がかかります。小さなカフェや居酒屋を想定した例は次のとおりです。

  1. 解体・片付け(自分または解体業者):不要な造作の撤去、清掃。
  2. 設備の下準備(職人・資格が必要):電気の配線、給排水管・ガス管の準備。
  3. 下地・木工事(職人または自分):間仕切りの下地、床の下地補修。
  4. 内装仕上げ(自分):壁・天井の塗装、壁紙貼り、床やタイルの施工。
  5. 器具の取り付け・接続(職人・資格が必要):コンセント・スイッチの取り付け、水栓や機器の接続。
  6. 家具・什器の設置(自分):テーブル・イスの配置、棚の組み立て、装飾の取り付け。

部分発注の注意点

工程ごとに職人に頼む場合、不具合が起きたときに「誰の作業が原因か」があいまいになりやすい点に注意が必要です。

  • やり直しが起きやすい場面:仕上げた壁にあとから配線を通すことになる、壁やタイルの仕上がりの厚みを伝えていなかったためにコンセントやスイッチの位置が合わない、など。職人が入る前に自分の作業を終わらせ、仕上げの厚みや位置を事前に伝えておく。
  • 責任の範囲を決めておく:水漏れが起きたとき、原因が職人の配管なのか、自分で取り付けた部分なのかで揉めることがあります。通水・通電の確認は職人の立ち会いのもとで行い、その場で確認した内容を記録しておく。
  • 保健所と消防署への事前相談:工事を始める前に、図面を持って保健所と消防署へ相談する。必要な設備や仕様は自治体や建物によって違うため、完成後に基準を満たさず営業許可が下りない、という事態を防げます。詳しくは「保健所・消防の事前相談」で解説しています。

短期間(2週間など)で仕上げたいときの現実

開店まで2週間ほどしかない場合、すべてを現場でゼロからつくるのは難しく、今ある設備を活かし、完成品を持ち込むことが前提になります。

  • 今ある設備や居抜きの状態を活かす:配線の変更や給排水管の移動を伴う工事は、申請や準備に日数がかかる場合があります。カウンターや水回りの位置を変えずに使うのが現実的です。
  • 完成品の家具や中古資材を使う:木材を切って塗装し、乾かす造作は、それだけで日数がかかります。すでに完成しているイス・テーブルや自立型の什器を搬入・設置すれば、工期を縮められます。
  • 職人の日程を先に押さえる:電気や水道の接続は、職人の都合がつかなければ進みません。資材の手配と同時に、職人の作業日を決めておく。

反対に、乾燥時間を削ること(パテ・塗料・接着剤が乾く前に次の作業に進むと、はがれやにおいの原因になる)と、複数の工事を同時に進めること(狭い店内に複数の職人と自分が入ると、作業場所がぶつかって効率が落ちる)は避けましょう。

資材と職人をまとめて相談するなら

テンポス川口飲食内装資材専門館では、飲食店向けの中古内装資材の購入と、職人の紹介をまとめてご相談いただけます。買い取った資材は自社工場で点検・清掃・補修してから販売しており、業者・個人を問わずご購入いただけます。職人は、飲食店の内装に関わるすべての職種の個人職人を全国でご紹介でき、「電気工事だけ」など必要な工程だけの紹介も可能です。依頼者さまの手数料はかからず、見積もりも無料。契約とお支払いは、依頼者さまと職人の直接です。

取り置きの期間は工事の工程に合わせてご相談ください。店頭では、スタッフと一緒に3D図面を無料でつくることもできます(予約制)。

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よくある質問(DIYと職人)

テーブルの組み立ては自分でやり、電気工事だけ職人に頼めますか?
はい、できます。コンセントの増設や配線など資格が必要な工事だけを電気工事士に頼み、家具の組み立てや塗装など資格が要らない作業を自分で行う、という分け方が可能です。
開店まで2週間しかありませんが、中古資材と部分工事で間に合いますか?
水回りや配線の位置を変えない居抜きの状態であれば、完成品の中古家具・什器の設置と、必要な工事だけに絞ることで間に合う可能性があります。職人の日程と、塗装などの乾燥時間を見込んで計画してください。
電気工事だけを頼むとき、何を準備すればよいですか?
設置したい照明や機器の型番・仕様(電圧・消費電力)、配線したい位置の寸法、壁や天井の写真を用意してください。最初に正確に伝えるほど、見積もりと工事がスムーズに進みます。
保健所や消防署への相談は、いつ行けばよいですか?
資材の購入や工事を始める前の、計画の段階で行ってください。図面や仕上げ材の資料を持って相談すると、完成後に基準を満たさずやり直す事態を防げます。