飲食店の内装工事で追加費用が出やすいのは、電気・ガス・給排水などの設備の容量不足や隠れた不具合を契約前・着工前につかめていないときと、工事区分や作業の時間帯の条件があいまいなときです。

居抜きでもスケルトンでも、契約前・着工前に専門業者と一緒に設備の能力と今の状態を確かめ、見積書の「別途工事」の項目を一つずつはっきりさせておけば、工事の途中で出る追加費用を減らせます。

本稿では、追加費用が出やすい8つの場面と防ぎ方、居抜き物件とスケルトン物件の違い、安さだけで選ぶリスク、見積もりのチェックリストまでを実務目線で解説します。費用を抑える考え方は「ハイブリッドDIY」、保健所・消防の手続きは「保健所・消防の事前相談」もあわせてご覧ください。

居抜き物件とスケルトン物件の違い

居抜き物件とは、前のテナントの設備や内装が残ったまま貸し出される店舗物件のことです。スケルトン物件とは、内装や設備が撤去され、建物の構造体(コンクリートや鉄骨)が見える状態で貸し出される店舗物件のことです。どちらの状態で借りるかによって、追加費用が出やすいところが違います。

項目居抜き物件スケルトン物件
状態前の店の設備・内装が残っている内装・設備がない
追加費用が出やすい原因残っている設備の不具合・故障/新しい業態に合わないレイアウトの変更/電気・排気などの容量不足/不要な設備の撤去・処分水・ガス・電気をゼロから引く設備工事/防水やグリストラップの新設/資材価格の変動
注意点使えると思っていた機器が使えないと、撤去と新設の両方の費用がかかる水回りや排気などの設備工事に費用がかかり、内装の材料に回せる予算が減りやすい

※ 内装工事の費用は、物件の状態、業態、広さ、選ぶ材料や設備によって大きく変わります。全国一律の目安はないため、現地調査と見積もりで確認してください。

追加費用が出やすい8つの場面と防ぎ方

1. 電気・ガス・給排水・排気の容量不足

なぜ起きるか:前のテナントと違う調理機器(火力の強いこんろ、大型のオーブン、食器洗浄機など)を入れると、今の電気の容量、ガスの供給、給排水管の太さが足りず、引き込みのやり直しなどが必要になることがあるためです。
防ぎ方:物件の契約前に、入れる予定の厨房機器の消費電力やガスの消費量を一覧にし、今の容量で足りるかを電気工事店やガス会社に確認します。

2. グリストラップの新設・容量不足

グリストラップとは、厨房の排水に含まれる油や食べかすを、下水に流す前に分けて受け止める装置のことです。
なぜ起きるか:今あるグリストラップが小さい、またはない場合に、自治体の決まりやビルの規約で新設を求められることがあるためです。
防ぎ方:設置が必要か、今の容量で足りるかを、自治体の下水道の担当部署や指定工事店、ビルの管理会社に事前に確認します。

3. 残っている設備の隠れた不具合

なぜ起きるか:居抜きで引き継いだエアコン、排気ダクト、給湯器、配管などが、見た目は問題なくても、実際に動かすと故障や水漏れが起き、修理・交換が必要になることがあるためです。
防ぎ方:引き渡しの前に、専門業者の立ち会いで実際に動かしてみて、不具合があった場合の費用の負担を、造作譲渡の契約書などにはっきり書いておきます。

4. 保健所・消防署の指摘によるやり直し

なぜ起きるか:着工後に、保健所の施設の基準(手洗い設備やシンクの数など。自治体によって違います)や、消防の基準(防炎物品、誘導灯、火災報知器など)を満たしていないことが分かり、壁の作り直しや設備の追加が必要になることがあるためです。
防ぎ方:着工前に、図面を持って保健所と消防署へ相談し、指摘された内容を図面に反映してから工事を始めます。

5. 原状回復の条件の確認不足

なぜ起きるか:賃貸借契約の原状回復の条件(退去時にどこまで元に戻すか)を考えずに造作したり、建物の構造部分を傷つけたりして、工事の範囲の見直しや補強が必要になることがあるためです。
防ぎ方:契約書の原状回復の条項を施工業者と共有し、どこまで手を加えてよいかを貸主・管理会社に事前に書面で確認します。

6. ビルの工事区分(A工事・B工事・C工事)の思い違い

工事区分とは、テナントビルの工事を、誰が発注し、誰が費用を負担し、誰が業者を決めるかで「A工事・B工事・C工事」に分けたルールのことです。
なぜ起きるか:自分で選んだ業者(C工事)で安く済ませるつもりだった排気ダクトの接続や防災設備の工事が、ビル側の指定業者しか施工できない「B工事」になっていて、ビル側の見積もりで頼まざるを得なくなることがあるためです。
防ぎ方:契約前に物件の「工事区分表」を確認し、B工事にあたる範囲は、ビルの指定業者から事前に見積もりをもらっておきます。

7. 夜間・休日の作業による割増

なぜ起きるか:商業施設やオフィスビルでは、音の出る工事や搬入を日中にできないことがあり、夜間・休日の作業になると、割増料金や警備員の費用が加わることがあるためです。
防ぎ方:ビルの規約で工事できる時間帯を確認し、夜間作業になる場合は最初から見積もりに入れてもらいます。

8. 解体で出る廃材の処分費

なぜ起きるか:解体で思った以上にコンクリートがらや不要な造作が出ると、産業廃棄物などとしての処理費用が増えるためです。
防ぎ方:解体・撤去する範囲を現地ではっきりさせ、処分費が「一式」ではなく、量にもとづいて見積書に書かれているかを確認します。

安さだけで材料や業者を選ぶリスク

工事費や材料費の安さだけで決めると、開店後の傷みや手入れの手間で、結果的に費用がかさむことがあります。

  • 傷みやすさ・衛生:水や油がはねる厨房のまわりに、水や油に弱い安い材料を使うと、はがれや傷みが早く出て、営業を止めて補修することになりかねません。
  • 掃除のしやすさ:凹凸の多い仕上げや複雑な造作は掃除に時間がかかり、人手の負担や衛生面の悪化につながります。
  • 修理のしやすさ:特殊な輸入資材や廃番の家具を大量に使うと、一部が壊れたときに部品が手に入らず、まるごと買い替えることになる場合があります。

見積もりで確認する項目

施工業者の見積書では、次の項目が書かれているかを確認してください。

  • 「一式」の中身:「電気工事一式」「解体工事一式」のようなまとめた書き方ではなく、配線の長さ、器具の数、人数、単価などの内訳があるか。
  • 「別途工事」の範囲:機器への電源の接続、防災設備との連動、ダクトを通す穴あけ、工事中の仮設の電気・水道代などが、見積もりに入っているか、別途か。
  • 施主支給品の取り付け・加工費:自分で用意した家具や中古資材の取り付け費が入っているか。購入店から現場までの運搬費と、現場での取り付け工賃は分けて確認する。
  • 処分費と搬入費:資材の配送料や、工事で出た廃材の処分費がはっきりしているか。

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よくある質問(内装工事の追加費用)

居抜き物件をなるべくそのまま使いたい。必要なところだけ改修を頼めますか?
はい。すべてを工務店に任せるのではなく、電気工事だけ、建具の取り付けだけなど、必要な工程に対応する職人に直接頼めば、改修を最小限に抑えられます。
スケルトン物件でも、中古の内装資材を使えば大きく費用を抑えられますか?
家具・建具・照明などの材料費は抑えられます。ただし、水回りや電気などの設備工事の費用は中古資材では減らせないため、設備工事にどれだけかかるかを先に確かめてください。
見積もりのあとで追加費用が出ないようにするには?
着工前に、設備の容量(電気・ガス・水道)とビルの工事区分(A・B・C工事)を確かめ、保健所・消防署への相談を済ませたうえで、見積書の「別途工事」の項目をはっきりさせることが大切です。
居抜き物件の設備が動かなかったら、修理費は誰が負担しますか?
契約の内容によります。「現状渡し」の契約では引き継いだ側の負担とされることが多いため、引き渡し前に専門業者の立ち会いで動作を確かめ、不具合があった場合の負担を契約書に書いておきましょう。