大工・電気工事士・設備・塗装・内装などの個人職人が飲食店オーナーから直接仕事を受けるなら、自分の働き方に合った受け方を選び、着工前に契約の条件をはっきり決めておくことが大切です。

直接契約とは、元請けなどの会社を間に挟まず、施工する職人と店舗オーナーが直接、工事の請負契約を結ぶことです。金額や工期を直接話し合える一方で、工事の範囲があいまいなまま始めたり、支払いの条件を決めていなかったりすると、トラブルになりやすくなります。

本稿では、仕事の受け方の比較、飲食店の工事ならではの特徴、職種ごとに必要な資格と登録、契約前に決めておく項目までを実務目線で解説します。働き方そのものについては「一人親方・副業で始める“スポット施工”入門」「内装職人が“直接依頼”で手取りを増やす仕組み」もあわせてご覧ください。

店舗工事の仕事の受け方4つ

個人職人が店舗工事の仕事を受ける方法は、主に元請けからの下請け・マッチングサイト・資材店などの紹介・知人や過去のお客さまからの紹介の4つです。案件の規模、仕事を取る手間、手数料、契約の形がそれぞれ違うため、自分の空き状況や得意な工事に合わせて組み合わせます。

受け方特徴良い点注意点
元請け(工務店など)からの下請け工務店や内装会社から、工事の一部を継続して請け負う自分で営業しなくても仕事が入りやすい/大きな現場に関われる単価が元請けの基準で決まりやすい/日程の自由がききにくいことがある
マッチングサイトサイトを通じて店舗オーナーとつながり、仕事を受ける空いている日に、単発の小さな案件を探しやすい登録は無料でも、成約時に手数料がかかることが多い/相見積もりの案件は、現地確認や見積もりの手間をかけても受注できないことがある。対応できる地域や規模を絞って応募する
資材店などの紹介店舗資材を扱う店などから、職人を探しているオーナーを紹介してもらう開業・改装を進めているオーナーと出会える/得意な工程だけを受けやすい窓口によって、登録や紹介の条件・手数料が違う/紹介の数は地域や時期で変わる
知人や過去のお客さまからの紹介過去の施主や知人、近所の飲食店オーナーから紹介を受ける信頼関係のある状態から始められる/紹介の手数料がかからない紹介が途切れると仕事が不安定になる/知り合いだと金額の話をしにくいことがある

飲食店の工事ならではの3つの特徴

飲食店の工事は住宅のリフォームと違い、営業の予定、衛生管理、保健所・消防署の基準に合わせて進める必要があります。

  • 営業時間外の作業が多い:営業中の店の修理や改装では、音・ほこり・においがお客さまに届かないよう、開店前・中休み・定休日・深夜の作業が多くなります。作業できる時間や近隣への配慮を事前に確認し、養生(周りをシートなどで覆って汚れを防ぐこと)をしっかり行います。
  • 保健所・消防署の基準に関わる:厨房の水回りやシンクは、保健所の基準(手洗い設備やシンクの数など。自治体によって違います)に関わります。壁や天井は燃えにくい材料の決まり(内装制限・建築基準法)が、カーテンやじゅうたんなどは消防法の防炎物品の決まりがかかる場合があります。基準を満たさないと営業許可が下りないことがあるため、着工前に確認します。
  • 開店日から逆算した工期:家賃の発生日や開店日が先に決まっていることが多く、工期の遅れはオーナーの損失に直結します。資材の遅れや、解体後に下地の傷みが見つかったときなどは、すぐにオーナーと連絡を取り合って日程を調整します。

職種ごとに必要な資格・登録と、建設業許可の金額基準

建設業許可とは、建設業法にもとづき、一定の金額以上の工事を請け負うために受ける許可のことです。1件の請負代金が500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)の「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可がなくても請け負えます。金額には消費税を含みます(出典:国土交通省「建設業の許可とは」・2026年10月9日確認)。

ただし、金額に関係なく、電気・給水・排水・ガスの工事には、それぞれの資格や登録が必要です。

職種・作業必要な資格・登録補足
電気工事
(コンセントの増設、照明の配線、スイッチの移設など)
電気工事士(建物の受電のしかたによっては第一種電気工事士などが必要)電気工事を請け負う事業として行う場合は、個人でも、都道府県知事などへの電気工事業者の登録が必要です(出典:愛知県「登録電気工事業者の新規登録について」・2026年10月9日確認。建設業許可を持つ事業者は届出)。
給水工事
(給水管の新設・延長・移設など)
水道事業者が指定した「指定給水装置工事事業者」単独水栓の取替えやパッキン交換など、配管を伴わない「軽微な変更」は対象外です(出典:国土交通省「指定給水装置工事事業者制度」・2026年10月9日確認)。
排水工事
(排水管の新設・延長・移設など)
多くの自治体で、市区町村が指定した「排水設備指定工事店」自治体の下水道条例によります。工事前に計画の確認申請が必要な場合もあります。
ガス工事
(ガス管の延長、ガス栓の増設など)
都市ガス:ガス会社またはその指定工事店/LPガス:液化石油ガス設備士事前に供給しているガス会社・販売店に確認します。
大工・造作
(棚の取り付け、カウンターの製作、建具の調整など)
資格は原則不要請負代金が上の金額基準以上になる場合は、建設業許可が必要です。
壁紙・床・塗装
(壁紙の張り替え、床タイル、塗装など)
資格は原則不要壁・天井の材料は内装制限(建築基準法)、カーテン・じゅうたん・床敷物は防炎物品(消防法)の決まりを確認して施工します。

※ テナントビルでは、ビル側が指定した業者でないと工事できない箇所があります。着工前に管理会社や所管の役所に確認してください。

オーナーと直接契約するときに決めておく6項目

直接契約では元請けが間に入らないため、工事の内容や支払いの条件を自分で決めて、書面に残す必要があります。口約束だけだと、工事のあとに「聞いていた内容と違う」「追加の費用は払えない」といったトラブルになりがちです。なお建設業法第19条では、建設工事の請負契約の当事者は、工事内容や請負代金などを書面に記載して相互に交付することとされています(許可の有無や金額で分けられていません。出典:e-Gov法令検索「建設業法」・2026年10月9日確認)。

  1. 見積もりと工事の範囲:何をどこまで行うかを書く。たとえば「カウンターの造作」なら、塗装や解体・廃材の処分まで含むのかを書いておく。
  2. 資材の用意と施主支給:資材を職人が用意するのか、オーナーが用意する(施主支給)のかを決める。施主支給の資材の部品不足や搬入の遅れで作業が止まったときの扱い(待機の費用など)も、見積もりの注記や契約書で決めておく。
  3. 工期と作業の時間帯:着工日、完了予定日、毎日の作業時間(早朝・夜間など)を決める。営業中の店では、養生や片付けの時間も含めて組む。
  4. 支払いの時期と方法:完了後に一括か、着手金と完了金に分けるか、支払期日、振込手数料をどちらが持つかを決める。
  5. 追加工事が出たときの扱い:解体後に下地の傷みなどが見つかったときの連絡のしかたと、「事前に合意しないまま追加費用は請求しない(追加の見積もりを出す)」というルールを決める。
  6. 契約書または注文書・請書:小さな工事でも、見積書に署名をもらうか、簡単な請負契約書を交わしておく。

テンポスの職人登録

テンポス川口飲食内装資材専門館では、飲食店の内装や小さな修理の仕事を受けたい個人職人の登録を受け付けています。

  • 職種と地域:大工・電気・設備・内装・塗装・建具など、飲食店の内装に関わるすべての職種が対象で、地域は全国です。電気だけ、設備だけといった一つの工程だけの参加や、副業・掛け持ちでの参加もできます。
  • 費用:サイトでの登録と面談(オンライン)は無料です。案件が決まった場合に、職人側に手数料がかかります(詳しくは面談でご説明します)。
  • 資格の確認:登録の時点では資格証は不要です。案件をご紹介するときに、その工事に必要な資格を確認します。
  • 契約と報酬:報酬は、開業者と職人の話し合いで決めていただきます。契約とお支払いも両者の直接です。トラブルの際、テンポスは基本的に介入しませんが、内容によっては間に入って仲介します。

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よくある質問(職人の仕事の受け方)

個人の大工や電気工事士でも、単発の工事だけを受けられますか?
はい。特定の工程だけを頼みたい店舗オーナーの案件を、マッチングサイトや資材店などの紹介で受けることができます。電気工事を事業として請け負う場合は、電気工事業者の登録が必要です。
職人登録のときに、資格証を出す必要はありますか?
窓口によって違います。テンポスの職人登録では、登録の時点では資格証は不要で、案件をご紹介するときに、その工事に必要な資格を確認します。
オーナーと直接契約するとき、報酬はどう決まりますか?
工事の範囲や作業の時間帯、資材を誰が用意するかなどをもとに、職人とオーナーが話し合って決めます。見積書を出し、内容に合意してから着工しましょう。
工事中に追加の作業が必要になったら、どうすればよいですか?
そのまま進めず、いったん作業を止めてオーナーに状況を説明し、追加の費用や工期の変更に合意してから再開します。追加作業が出たときの連絡のしかたを、契約の段階で決めておくと安心です。